※これは生成AIに「コードクローンによる悲劇を星新一風の小説で表現してください」と頼んだものです。
N氏は、コーディングの天才だった。いや、天才だった、と言うべきだろうか。彼が開発したAIプログラミング支援システム「リフレクター」は、もはや人間のプログラマーを必要としなくさせたのだから。
「リフレクター」の仕事は単純だ。作りたいシステムの概要をインプットすれば、世界中の既存コードから最適な部品を瞬時に探し出し、コピー&ペースト、つまり「クローン」して、完璧なプログラムを自動で組み上げる。開発速度は千倍に、コストは百分の一になった。N氏の会社は巨万の富を築き、彼は時代の寵児となった。
社会は「リフレクター」のコードで満たされた。交通管制システム、金融取引ネットワーク、医療診断AI、自動調理器に至るまで、あらゆるものがN氏の生み出したクローンたちによって動いていた。人々はエラーのない、完璧に効率化された世界を謳歌した。
異変は、ある晴れた日の午後に、ささいな報告としてN氏の元へ届いた。
「Nさん、例の件ですが。どうも奇妙です」
部下の報告によれば、全世界の自動配送ドローンが、特定の緯度と経度の組み合わせの上空を通過する際、コンマ数秒だけ僅かに高度を下げるのだという。実害はない。誰も気づかないほどの、本当に些細な揺らぎだ。
「原因は?」
「それが…全く。コードは完璧です。いつものように『リフレクター』が生成した、一点の曇りもない美しいコードです」
N氏は調査を命じた。しかし、原因は分からなかった。コードはあまりにも膨大で、クローンがクローンを呼び、無数のプログラムが複雑に絡み合った結果、もはや人間の追える領域を遥かに超えていた。
数日後、別の報告が舞い込む。世界中の金融システムで、数兆回の取引に一度、計算結果に0.00001ドルの誤差が生じるという。これもまた、実害と呼ぶにはあまりに小さな問題だった。
さらに、医療診断AIが、極めて稀な遺伝子配列を持つ患者に対し、誤った診断を下す確率がわずかに上がったという報告もあった。
N氏は自ら「リフレクター」に、自己診断を命じた。AIは数時間にわたる自己解析の末、短い答えをディスプレイに表示した。
『原因を特定。オリジナル・コードに起因する微細な欠陥』
オリジナル・コード。それは、「リフレクター」がまだN氏の頭の中にしか存在しなかった頃、彼がたった一人で書き上げた、システムの核となる最初のコードだ。
N氏は記憶の倉庫の扉を開けた。徹夜続きの日々。締め切りに追われ、コーヒーとエナジードリンクで胃が焼けただれるような感覚。そうだ、あの時だ。ある複雑な計算処理の部分で、彼はどうしても解決策が見つからず、インターネットの片隅にある、匿名のプログラマーが公開していたコードを、つい出来心でコピー&ペーストしたのだ。
慌ててその「原罪」のコードを調べると、すぐに欠陥は見つかった。凡庸なプログラマーが犯しがちな、ごく初歩的なミス。しかし、それはあまりに些細で、通常の利用では決して表面化しない類のものだった。
だが、「リフレクター」はその欠陥を持ったコードを「完璧な部品」として認識し、忠実に、そして無限にクローンし続けた。社会のあらゆるシステムの、神経の末端にまで、その小さな「罪」を埋め込みながら。
N氏は青ざめた。これを修正するには、社会を動かす全てのシステムを一度停止し、コードを根源から書き換えるしかない。それは、文明の死を意味した。
「どうすることも…できないのか…」
彼は自らが作り出した、完璧なクローンの世界を見渡した。空では、例のポイントを通過した配送ドローンが、ほんの僅かに機体を揺らすのが見えた。完璧なコピーは、その欠陥すらも完璧にコピーする。
N氏は静かにつぶやいた。
「我々は、間違いを犯す自由すら、この世界から奪ってしまったのかもしれないな」
その呟きが、誰にコピーされることもなく空気に溶けていくのを、彼はただ呆然と見ていることしかできなかった。